SDGs(エスディージーズ:Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)の略称)への取り組みの一つとして、脱プラスチック(脱プラ)への動きが加速しています。2020年7月に日本国内でのレジ袋の有料化がスタートしました。スターバックスではこれに先立ち、一部のストローが紙製になり、話題になりました。
一方で、調べていくと脱プラスチックは良いことばかりではないことが分かってきました。ここでは、脱プラスチックのメリットとデメリットを簡単に解説します。
まずは簡単にプラスチックごみの実態やその行方について簡単に触れていきましょう。
プラスチックごみの実態
これは環境省が毎年調査を行っている「容器包装廃棄物の使用・排出実態調査の概要(令和元年度)」です。家庭ごみにおけるプラスチック類のごみの湿重量比率は12.4%となっています。
内訳(湿重量比率で比較)はペットボトルが23%、容器包装以外のプラスチック類が12%、発泡スチロール・トレイが2%、弁当の容器やお菓子の袋などに使われる容器包装が64%となっています。
ペットボトルや発泡スチロールなどはかさばり、量があるように思われますが、重量で考えると家庭ごみにおけるプラスチック類のごみのほとんどが容器包装なんですね。
また、プラスチック類のごみは小さくすることが難しくてかさばるので、軽い反面、容積が大きくなります。そのためごみ袋がすぐにいっぱいになってしまい、毎日のごみの量(ごみ袋の数)も増える傾向にあります。
プラスチックごみの行方
2016年のデータですが、これによると日本国内で年間に940万トンのプラスチック廃棄物が出ていて、このうちの約45%が容器包装とペットボトル(426万トン)で、容器包装のリサイクル率は約20%、ペットボトルのリサイクル率は約50%(ともに自治体回収分/使用・排出分で計算)となっています。
ペットボトルは家庭から出されたごみを自治体が回収するだけでなく、自動販売機横にあるごみ箱やコンビニやスーパーなどでの分別ごみや回収ごみもあるので、自治体回収分以上のリサイクルがされていると思われます。
上の資料ではペットボトルのリサイクル率は85.8%とかなり高い数値になっています。
脱プラスチックのメリット
海や生き物を守る
海のごみ(海洋ごみ)のうちの65.8%がプラスチックです。
日本財団ジャーナルによれば、プラスチックごみは世界に合計1億5,000万トン以上(※1)の量が存在し、毎年約800万トン(ジャンボジェット機にして5万機相当)(※2)に及ぶ量が新たに流れ出ていると推定され、このうち2~6万トン(0.25%~0.75%)が日本から発生したものと推計されるそうです。
※1.参考:WWFジャパンWEBサイト「海洋プラスチック問題について」、McKinsey & Company and Ocean Conservancy(2015)
※2.参考:WWFジャパンWEBサイト「海洋プラスチック問題について」、Neufeld,L.,et al.(2016)
このショッキングなニュースを覚えている方も多いでしょう。2019年3月19日に配信されたAFP BB Newsのニュースで、フィリピンの海岸で胃にたまった40kgものプラスチックごみのせいで食事ができなくなってしまい餓死したというニュースです。
【3月19日 AFP】約40キロのプラスチックごみが胃にたまって餓死寸前に陥ったクジラが15日にフィリピンの海岸に打ち上げられ、翌日に死んでいたことが分かった。環境保護活動家らが18日明らかにした。活動家らは、過去に見てきた海洋プラスチック汚染の事例の中でも、今回は最悪の部類に入ると指摘した。
引用:AFP BB News
(中略)
当局と環境保護団体がクジラの死骸を解剖したところ、体内からレジ袋やコメ袋など約40キロのプラスチックが見つかった。
(以下略)(c)AFP
私たちの食生活や健康を守る
クジラだけではありません。私たちが食べている魚もプラスチックごみに汚染されています。
リサイクルされずに捨てられたプラスチックごみは自然には分解されずに、紫外線などを浴びながら劣化することで5mm以下のマイクロプラスチックとなり、海面や海中をさまよいます。
それを誤って食べてしまった小魚やそれを捕食する大型の魚を、私たちは食べているのです。私たちが捨てたプラスチックが私たちの体の中に入ってきているのです。
脱プラスチックは海の環境や生き物だけでなく、私たち自身の食生活や健康を守ることでもあるのです。
脱プラスチックのデメリット
脱プラはごみの重量増加!?地球温暖化促進!?食品ロス削減!?
SUSTAINABLE BRANDS 日本版の記事によると、米国における都市廃棄物の種類と素材をシティ・カレッジ・オブ・ニューヨークの化学工学科が分析しまとめた論文の概要を紹介しています。
これによると、もしプラスチック導入以前に用いていた素材で製品や容器包装に再び採用すれば、廃棄物(ごみ)は30%増える可能性があると指摘しています。
また、プラスチック素材を取り入れることが、製造に必要なエネルギー量は80%減、地球温暖化への影響は130%減とすることを可能にしていて、環境負荷の抑制に役立っていると研究者らは述べているそうです。
また、BBC NEWS JAPAN(2020年1月11日)は脱プラスチックが「環境破壊につながる恐れ」との記事を掲載しています。
「プラスチックは今も往々にして、最も効果的な素材だ。例えば、プラスチック製の袋に包んだきゅうりは14日以上長持ちするので、食品ロス削減につながる。」
引用:BBC NEWS JAPAN(2020年1月11日)
英国小売協会(BRC)のアンドリュー・オピー氏
プラスチックは安価で軽くて加工も簡単で、容器包装に適しています。
完全なる脱プラスチックは逆に地球環境への負荷を高めてしまうのです。
まとめ
脱プラスチックは世界的動向であり、日本でも少しずつですが歩み始めているところです。
しかし、脱プラスチックにはメリットとデメリットがあることを忘れてはいけません。大事なことは、さきの英国小売協会(BRC)のアンドリュー・オピー氏の言葉を借りましょう。
「一貫性のある廃棄物・資源戦略とは、単にプラスチック利用を減らすことだけではない。自分たちが買うものの環境負荷をどう減らすか、これを最優先することだ」
引用:BBC NEWS JAPAN(2020年1月11日)
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