「だらしない夫じゃなくて依存症でした」家族視点で依存症を描いた衝撃作

 「俺はいつだってお酒を辞められる」「依存症は甘え」・・・なんて思っていませんか?

 依存症患者を支える家族や会社視点で周囲の人がどのように接するべきかが丁寧に描かれており、とても勉強になります。「依存症なんて関係ないよ!」って人ほど読んでほしいなと思ったので紹介記事を書きました。

私

普通の漫画としても面白いのでオススメです!

目次

知ったきっかけは芸能人の飲酒運転事故

 2020年9月22日、飲酒運転でTOKIOの元メンバー山口達也氏が逮捕されました。

 2018年に未成年への強制わいせつ容疑でTOKIOを脱退した山口氏。逮捕される前日はTOKIOの結成記念日で、ファンクラブ会員宛ての郵便物には山口氏の復帰を仄めかす様なことが書いてあったそうです。まさに最悪のタイミングでの事件でした。

 「何やってんだよだらしないなぁ」と思っていたのですが、ツイッターのフォロワーさんがこの漫画を紹介していました。

「だらしない夫じゃなくて依存症でした」

https://www.mhlw.go.jp/izonshou/izonsho_manga_v01.html

 最初はあまり興味は惹かれず読んでいましたが、とても怖面白くて最後まで一気読み!そのままの勢いで単行本版も購入しました。

 そして依存症啓発漫画なので依存症についてわかりやすく解説してくれるのですが、私は依存症について余りにも無知だったなと痛感しました。

 先ほどの山口氏の逮捕への感想もそうですが、依存症への無知が依存症患者を追い詰めてしまっていたんだなと反省しました。

※山口氏がアルコール依存症であるかどうかはわかりませんが、その可能性がある人に対して無配慮な感想を抱いたことに対して反省しています。

以下若干のネタバレを含みます。

ストーリー:家族視点で描かれた「依存症になるところから社会復帰するまで」

 この漫画は普通のサラリーマンである夫が、ジワジワとアルコール依存症になる様子が描かれています。

 最初はちょっと飲酒量が多くなってきたかな?程度で、お酒をたくさん飲む人から見たら飲酒量はむしろ少ないほう。…なんですが、苦手な仕事を克服するために飲み(下画像)、嫌なことがあったら飲み…と段々コントロールが利かなくなる様がすごくリアルで怖い。

つらい仕事を克服するために仕事中にお酒を飲む夫
出典:三森みさ、2020年、「だらさいない夫じゃなくて依存症でした」、株式会社時事通信社、P56

 何が怖いって依存症の夫もお酒を止めようとしている、妻も止めてもらいたくなんとかしようとしている。にも関わらずどんどんアルコール依存症になってしまい、どうしようもなく本人も妻も疲弊していく描写が怖い。

 私も「どうやって止めればいいんだ!?」と漫画の妻と一緒に悩みながら読み進めていました。 

「依存症なんて関係ない」と思う人ほど読んでほしい

「依存症は他人事」と思っていた自分に気づいた

 今まで私が読んだことのある依存症防止漫画って大体薬物でした。中学生や高校生の時とかに小冊子が配られて、簡単な教育も受けていたと思います。

 ただ、当時の私にはそうした漫画は心に響きませんでした。

 今思えば、「薬物は犯罪で一線を越えたやつが悪い」、「薬物が危ないだけ」と薬物に手を出す世界を、依存症というものをどこか他人事のように見ていたと思います。

 この漫画の主人公夫妻も、当初は私と同じように「依存症を他人事」と考えている節が見られます(下画像)。

夫はアルコール依存症ではなくだらしないだけでは?と考えてしまう主人公(妻)
出典:三森みさ、2020年、「だらさいない夫じゃなくて依存症でした」、株式会社時事通信社、P53

 依存症本人の夫は「やめようと思えばいつでもやめられる」、妻からしたら「夫はだらしないだけでは?」…と。

 しかしこの漫画を最後まで読めば、私たちの普通の生活の地続きに依存症があることがよくわかります。

 最初のきっかけは「仕事で嫌なことがあったら少しお酒を多く飲む」、「飲み会が楽しくてたくさん飲んだ」等、誰でも経験があるようなこと。それが依存症への入り口になりうるというのはかなりショッキングな内容でした。

一度依存症になったら完治しない

 そして一度依存症になったら完治はしないという恐ろしい事実。

 アルコールだろうがギャンブルだろうが、買い物だろうがゲームだろうが、一度依存症になってしまうと、脳が変質してしまい元に戻せないそうです。

 完全に止めることはできても、ほどほどに止めることができない。恐ろしいですね…。

依存症を克服するには周囲の理解が必要

 薬物と違ってお酒、パチンコ、買い物、ゲーム等は合法で堂々と販売・営業しています。そして周囲の人が依存症に対して無知であれば「1杯ぐらい、いいだろ?」「ちょっとぐらい付き合えよ」と誘惑してきます。

 先ほど言いましたが一度依存症になれば「ちょっとぐらい」で止めることはできず、また依存してしまいます。こんな環境で「止められないのは甘え」はひどい話ですね。

 周囲が依存症に理解して適切な対処を取らなければ、依存症の方が社会復帰するのは難しいでしょう。

 この漫画では、周囲に依存症に理解がある人がいて、会社も治療に協力的だったため、主人公が社会復帰できました。

 しかし、もし妻が無知のままだったら?会社が厳しい処置(といっても今の社会常識レベル)をとり主人公をクビにしていたら?間違いなくBADENDになっていたと思います。

 依存症患者の社会復帰は、周囲の理解が必要不可欠に感じました。

まとめ

  私自身、「依存症なんて他人事」とどこかで思っていた節がありましたが、読んでよかったなと思いました。

 最近では『うつ病患者に対して「がんばれ」は禁句』は常識となっていますが、昔は「うつ病は甘え」「頑張りが足りない」等、周囲の人による病気の不理解がさらに患者を追い詰めるという状況でした。

 依存症もまさに同じではないでしょうか。周囲に依存症の方がいたときに適切な対処ができなければ、本人やその家族を追い詰めてしまうことにもなりかねません。

私

そういう意味では、「依存症に関係ない人」はいないのかも。

WEB漫画版「だらしない夫じゃなくて依存症でした」

https://www.mhlw.go.jp/izonshou/izonsho_manga_v01.html

 WEB版であれば無料で読めますが、単行本版も販売されています。全話作画修正されている他、著者の依存症経験談(45P)や全国の依存症相談窓口が収載されています。

 著者の経験談は実話ということだけあって、短編ながら本編と同じぐらいの濃さがあります。人によってはこちらのほうが心に刺さるかもしれません。

単行本版

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